PHP Data Object (PDO) とはPHPに拡張モジュールとして標準で提供されているデータベース抽象化レイヤであり、各種データベース(DBMS、RDBMS)への接続を抽象化する。

概要

2005年11月24日にリリースされたPHP 5.1.0から標準でバンドルされるようになった拡張モジュール(PECL)であり、データソース名(DSN)によって使用する内部エンジンを切り替えることで各種データベースに対する統一的なアクセスインターフェイスを提供する。

例えば、上記のコードではPDOクラスの第一引数にDSNを与えており、mysql:がMySQL或いはMariaDBに接続するための内部エンジンを使用することを表している。 この部分をpgsql:などに変更することで使用するデータベースをMySQLからPostgreSQLなどに変更することが出来る。

多くのデータベースに対応する必要のあるシステム開発や、システムを異なるデータベースに移行するときなどに、特に威力を発揮する。 またDoctrineやEloquentのようなORMライブラリの内部でデータベース接続を行うバックエンドとして利用されている。

機能

PDOは、以下の機能を提供している。

  • INSERT・UPDATE・DELETEなどのSQLクエリの実行
  • 以下の形式でのデータベースからの値の取得
    • 配列
    • オブジェクト(定義されているクラスのインスタンスの作成)
    • 同じスコープ内で有効な変数
    • 文字列
  • 複数次元の配列でのすべての行の取得
  • プリペアードステートメントの実行及びエミュレーション
  • トランザクションの使用
  • オートコミットのサポート
  • テーブルのカラムの一般化機能

プリペアードステートメントを使ったプログラム例

例えば userテーブルに変数$nameに'ウィキペディア'という文字列をSQLに挿入する例(prepareメソッド):

実装までの経緯

PHPはWebアプリケーション作成の開発に適した言語であり、Webアプリケーションと連携する多くのデータベースにアクセスする機能も、モジュールとして標準で備えている。しかし、その接続するための関数とそれに渡す引数はそれぞれのデータベース毎に異なっていた。

MySQLやMariaDBではmysql_connect関数に代表されるMySQLモジュール(PHP7.0現在はmysqli_connnectに代表されるMySQLiに置き換えられた)、PostgreSQLではpg_connect関数に代表されるPostgreSQLモジュールなど、データベース毎に実装が異なっていた。また、関数に渡すパラメータなども各データベースによって異なるなど、複数のデータベースをサポートする開発者にとって多大な負担になっていた。

PHP4では、PEARの1つとして、PEAR::DBがあり、これがデータベースへのアクセス機能をまとめ、共通のAPIを提供していた。しかし、この機能はPHPスクリプトで書かれているため、速度面で遅くなりがちという欠点を抱えていた。中小規模のシステムならともかく、大規模なシステムではその速度の遅さが欠点となっていた。

そこで、PHP5からはC言語で書かれた拡張モジュールとしてPDOが作成・提供されることとなった。

備考

PDOはデータベースへの接続を抽象化するライブラリであり、SQLに対する抽象化は殆ど行わないことに注意が必要である。 すなわちデータベース毎の独自拡張の利用やSQL構文の差異の吸収はプログラマが手で行うか、クエリビルダやORMなどのより高度な抽象化を行うライブラリを利用する必要がある。

また、プリペアドステートメントを用いることでSQLインジェクションの脆弱性をより安全に回避することができるが、環境によっては対応が不完全で問題が発生したケースもある。

注釈

出典

関連項目

  • 関係データベース管理システム (RDBMS)

外部リンク

  • PHP: PDO - Manual PHP 公式サイト、PDO のマニュアル
  • オンラインテストPDO関数

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